引越しは、猫にとって大きなストレスになります。慣れ親しんだ縄張りを失い、知らない場所に連れてこられることで、不安や恐怖を感じるのは当然のこと。新居で隠れたまま出てこなかったり、食欲がなくなったり、粗相をしてしまったりと、普段とは違う行動が見られることも少なくありません。
でも、適切な準備と対応をすれば、猫の不安を最小限に抑えることができます。わたしも何度か引越しを経験していますが、事前の準備と引越し後のケアを丁寧にすることで、猫たちは比較的スムーズに新しい環境に馴染んでくれました。
- 引越しが猫に与えるストレスの原因と症状
- 引越し前の準備とやっておくべきこと
- 引越し当日の猫の安全な移動方法
- 新居での最初の過ごし方と環境づくり
- 猫が新居に慣れるまでの期間とサポート方法
- 引越し後に見られる問題行動への対処法
この記事では、引越しの各段階で猫のストレスを減らすための具体的な方法をご紹介します。引越し前の準備から新居での慣らし方、トラブルへの対処法まで、実践的なアドバイスをまとめました。
猫が新しい環境にスムーズに適応できるよう、一緒に準備を進めていきましょう。
引越しが猫に与えるストレスとは
猫は縄張り意識が強く、環境の変化に敏感な動物です。引越しによって慣れ親しんだ場所を失うことは、猫にとって大きな不安要因となります。

猫がストレスを感じる主な理由
縄張りの喪失
猫は自分の縄張りに強い愛着を持っています。においづけをした家具や壁、安心できる隠れ場所などが一度にすべて失われることで、心理的な安定を失ってしまいます。
未知の環境への恐怖
新居は猫にとって完全に未知の空間です。どこが安全でどこが危険か分からない状態は、野生の本能的に大きな不安を引き起こします。
引越し作業による混乱
荷造りや搬出入の騒音、知らない人の出入り、普段と違う家族の様子など、引越し作業そのものが猫を不安にさせます。
移動のストレス
キャリーに入れられ、車や電車で移動することも、猫にとっては大きなストレスです。特に普段から外出に慣れていない猫は、移動だけで疲弊してしまうこともあります。
引越しストレスで見られる症状
猫が強いストレスを感じている時は、以下のような行動や症状が現れることがあります。
| 症状 | 具体的な様子 |
|---|---|
| 隠れて出てこない | クローゼットやベッドの下に長時間こもる |
| 食欲不振 | いつものフードを食べない、または食べる量が減る |
| 過剰なグルーミング | 同じ場所を舐め続け、ハゲができることも |
| 粗相 | トイレ以外の場所で排泄してしまう |
| 攻撃的になる | 触ろうとすると威嚇したり噛んだりする |
| 下痢や嘔吐 | ストレス性の消化器症状が出る |
| 夜鳴き | 夜中に大きな声で鳴き続ける |
こうした症状が見られても、多くの場合は一時的なものです。適切な対応をすれば、徐々に落ち着いていきます。
引越し前の準備|2週間前からできること
引越しのストレスを最小限にするには、事前の準備が何より大切です。少なくとも2週間前から、計画的に準備を進めましょう。

新居の安全確認
引越し前に新居を訪れる機会があれば、猫の安全面をチェックしておきます。
確認ポイント
- 窓やベランダの脱走防止対策
- 隠れられそうな危険な隙間の有無
- 有毒植物が置かれていないか
- コード類や小物の片付け状況
可能であれば、引越し前に脱走防止ネットの設置や危険箇所の対策を済ませておくと安心です。
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キャリーに慣れさせる
普段からキャリーに入る習慣がない猫は、引越し前からキャリーに慣れさせておきましょう。
慣れさせる手順
- リビングなどにキャリーを常に置いておく
- 中におやつやお気に入りの毛布を入れる
- 扉を開けたまま自由に出入りさせる
- 短時間、扉を閉めてみる練習をする
引越し当日にいきなりキャリーに入れると、それだけで大きなストレスになってしまいます。
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旧居のにおいを保存する
猫は自分のにおいがする物に安心感を覚えます。引越し先に持っていくアイテムを準備しておきましょう。
持っていくと良いもの
- 普段使っているベッドや毛布
- お気に入りのおもちゃ
- 爪とぎ(できれば洗わずそのまま)
- トイレ(可能なら同じものを使用)
- フードと食器
新品のアイテムばかりだと、猫は「ここは自分の場所じゃない」と感じてしまいます。古くてもにおいのついた物を優先しましょう。
動物病院の情報収集
引越し先の近くにある動物病院を事前に調べておくと、万が一の時に慌てずに済みます。
確認しておきたいこと
- 診療時間と休診日
- 夜間救急対応の有無
- 口コミや評判
- 現在の病院からカルテを送ってもらえるか
可能であれば、引越し前に一度挨拶がてら訪問しておくのも良いでしょう。
引越し当日の猫の扱い方
引越し当日は、最も慌ただしく猫もストレスを感じやすいタイミングです。できるだけ落ち着ける環境を整えましょう。
猫を安全な場所に隔離する
荷物の搬出中は、猫を1つの部屋に隔離しておきます。
隔離の手順
- 浴室や使っていない部屋に猫のトイレ、水、フードを用意
- キャリーや毛布も一緒に入れておく
- 扉に「猫がいます・開けないでください」と張り紙をする
- 引越し業者にも猫がいることを伝える
脱走やパニックを防ぐため、隔離は必須です。
移動は最後にする
荷物の搬出が終わり、部屋が静かになってから猫を移動させます。
移動時のポイント
- キャリーにバスタオルをかけて視界を遮る
- 車内では座席にしっかり固定する
- 夏場は冷房、冬場は暖房で適温を保つ
- 長距離移動の場合は途中で休憩を入れる
移動中に鳴いても、キャリーから出してはいけません。車内で脱走すると大変危険です。
新居到着後はすぐに隔離部屋へ
新居に着いたら、すぐに猫を落ち着いた部屋に移動させます。
最初の環境設定
- 荷物の少ない静かな部屋を選ぶ
- トイレ、水、フード、ベッドを配置
- キャリーを開けて、自分から出てくるのを待つ
- 無理に抱っこしたり触ったりしない
猫は自分のペースで新しい環境を確認したい生き物です。焦らず見守りましょう。
新居での最初の1週間の過ごし方
引越し後の1週間は、猫が新しい環境に慣れるための重要な期間です。無理をさせず、段階的に行動範囲を広げていきます。

最初は1部屋から始める
いきなり家全体を自由にさせると、猫は混乱してしまいます。まずは1つの部屋だけで過ごさせましょう。
隔離期間の過ごし方
- 2〜3日は同じ部屋で過ごさせる
- トイレの場所を覚えさせる
- 食事と水分補給を確認する
- 隠れていても無理に出さない
猫がリラックスして歩き回るようになったら、次のステップへ。
段階的に行動範囲を広げる
隔離部屋で落ち着いてきたら、少しずつ他の部屋も探索させます。
広げ方の例
- 隣の部屋への扉を開ける
- 数日かけて廊下やリビングにも慣れさせる
- 最終的に家全体を自由に動けるようにする
猫が怖がっている様子なら、無理に進めず前の段階に戻りましょう。
安心できる隠れ場所を確保する
新居でも、猫が「ここは安全」と思える場所を作ってあげることが大切です。
隠れ場所の例
- キャットタワーの上段
- ベッドの下
- クローゼットの一角
- 段ボール箱のハウス
わがやのじゅにあも、むかえた直後は段ボールにこもっていました。でも、そこが安全基地になったおかげで、少しずつ外に出てくる時間が増えていきました。
猫が新居に慣れるまでの期間
猫が完全に新居に慣れるまでの期間は、個体差があります。性格や年齢、これまでの経験によって、数日で馴染む猫もいれば、数ヶ月かかる猫もいます。

一般的な適応期間の目安
| 期間 | 猫の様子 |
|---|---|
| 1〜3日 | 隠れていることが多い、警戒心が強い |
| 1週間 | 少しずつ探索し始める、食欲が戻る |
| 2〜4週間 | 日常生活に戻り、遊ぶ余裕も出てくる |
| 1〜3ヶ月 | 完全にリラックスし、新居を自分の縄張りと認識 |
この期間はあくまで目安です。猫のペースを尊重し、焦らず見守りましょう。
慣れるのが早い猫・遅い猫の特徴
慣れるのが早い猫
- 好奇心旺盛
- 若くて適応力がある
- 過去に引越し経験がある
- 人や環境の変化に比較的強い
慣れるのに時間がかかる猫
- 警戒心が強く臆病
- 高齢で環境変化に弱い
- 保護猫でトラウマがある
- 長年同じ場所で暮らしていた
どちらのタイプでも、時間をかければ必ず慣れてくれます。比較せず、その子のペースを大切にしましょう。
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引越し後のトラブルと対処法
引越し後、一時的に問題行動が見られることがあります。それぞれの対処法を知っておくと安心です。
食欲がない・食べない場合
ストレスで食欲が落ちることはよくあります。1〜2日様子を見ても大丈夫ですが、3日以上食べない場合は注意が必要です。
対処法
- いつものフードを使う
- フードを少し温めて香りを立てる
- ウェットフードを混ぜる
- 静かな場所で1匹で食べられるようにする
それでも食べない場合は、動物病院に相談しましょう。
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トイレで排泄しない・粗相をする場合
環境が変わると、トイレの場所が分からなくなったり、不安から粗相をすることがあります。
対処法
- トイレの数を増やす(頭数+1個が理想)
- 旧居で使っていた猫砂を混ぜる
- 粗相した場所はしっかり消臭する
- 静かで落ち着ける場所にトイレを設置する
粗相を叱るのは逆効果です。原因を探り、環境を整えましょう。
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隠れて出てこない場合
引越し直後に隠れるのは正常な反応です。無理に引っ張り出す必要はありません。
対処法
- 隠れ場所の近くにフードと水を置く
- 静かに見守り、自分から出てくるのを待つ
- 好きなおもちゃで少しずつ誘う
- 家族も普段通りに過ごす
2週間経っても全く出てこない場合は、獣医師に相談しましょう。
夜鳴きがひどい場合
不安から夜中に鳴き続けることがあります。特にシニア猫は認知症の可能性もあるので注意が必要です。
対処法
- 寝る前にたっぷり遊んで疲れさせる
- 夜間用の落ち着けるスペースを作る
- フェロモン製品(フェリウェイなど)を使う
- 昼夜逆転しないよう、日中は刺激を与える
あまりにひどい場合は、ストレス以外の病気が隠れている可能性もあります。
攻撃的になった場合
不安や恐怖から、普段は大人しい猫が攻撃的になることもあります。
対処法
- 無理に触らず、猫から近づいてくるのを待つ
- 急な動きや大きな音を避ける
- おやつやおもちゃで少しずつ距離を縮める
- 安全な隠れ場所を確保する
時間が経てば落ち着いてくることがほとんどです。焦らず見守りましょう。
フェロモン製品の活用
猫のストレスを和らげるために、フェロモン製品を活用するのも効果的です。
代表的な製品
- フェリウェイ(プラグインディフューザー)
- フェリウェイスプレー
- ジルケーン(サプリメント)
フェロモン製品は、猫が安心を感じるフェイシャルフェロモンを人工的に再現したものです。新居の各部屋に設置することで、「ここは安全な場所」と認識しやすくなります。
わがやのじゅにあは分離不安があるため、フェリウェイは私が外出する時にだけ使用しています。外出予定の約2時間前に電源を入れ、帰宅するまでつけたままにしています。こうすることで、帰宅時に玄関前で待つことが減り、キャットタワーでリラックスした状態で迎えてくれるようになりました。

以下は、わがやで使用している製品です。必要な方の参考になれば幸いです。
セバ・ジャパン フェリウェイ 猫用 専用拡散器1個+リキッド48mL
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先住猫がいる場合の注意点
もともと猫を飼っていて、その猫と一緒に引っ越す場合は、また違った配慮が必要です。
すべての猫を平等に扱う
引越しのストレスは、すべての猫が感じています。特定の子だけを優先せず、みんなに同じように接しましょう。
平等に扱うポイント
- それぞれに専用のトイレを用意する
- 食事は別々の場所で与える
- 全員に隠れ場所を確保する
- 遊びや撫でる時間も均等にする
嫉妬や不安から、猫同士の関係が悪化することもあります。普段以上に気を配りましょう。
環境が変わると関係性も変わる可能性
旧居では仲が良かった猫同士が、引越し後に険悪になることもあります。これは縄張りがリセットされ、新たな序列を決めようとするためです。
対処法
- 最初は別々の部屋で過ごさせる
- 少しずつ対面させ、様子を見る
- 喧嘩が激しい場合は再度隔離する
- 時間をかけて新しい関係を築かせる
数週間から数ヶ月かけて、新しいバランスが取れていきます。
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引越し後も続くストレスサイン
引越しから1ヶ月以上経っても、以下のような症状が続く場合は、獣医師に相談しましょう。
受診を検討すべきサイン
- 食欲が全く戻らない
- 体重が大幅に減った
- 下痢や嘔吐が続く
- 過剰なグルーミングでハゲができた
- 攻撃性が増している
- 完全に引きこもったまま
ストレスが原因で体調を崩していたり、引越しとは関係ない病気が隠れている可能性もあります。
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二度目以降の引越しは楽になる?
猫によっては、一度引越しを経験すると、次回からは比較的スムーズに適応できることもあります。
経験による学習
- キャリーに入ることへの抵抗が減る
- 環境が変わっても「大丈夫」と理解する
- 新しい場所でも探索する意欲が出る
ただし、すべての猫がそうなるわけではありません。高齢になるにつれ、逆に環境変化に弱くなることもあります。
まとめ
引越しは猫にとって大きなストレスですが、適切な準備と対応で不安を最小限にすることができます。
大切なのは、猫のペースを尊重し、焦らずゆっくり見守ること。最初は隠れていても、時間をかければ必ず新しい環境に慣れてくれます。
旧居のにおいがついたアイテムを持っていったり、フェロモン製品を活用したり、できることから始めてみましょう。猫の様子をよく観察し、無理をさせないことが何より大切です。
新しい家で、猫が安心してリラックスできる日が来るまで、そっと寄り添ってあげてくださいね。

